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さくらのストーン

あさそら

「夕やけ、こやけ、きれいだな。
もえる赤、ふしぎの石の中にも、あるのかな。」

青空と夜空、ふたつをつなぐ、赤い夕やけ。
ポケットさぐり、石を手に、また空見あげる。

あれ、夕日、どこ?

ちょっと目をはなしたら、もう赤くない空。
空のバトンタッチは、いつも、いっしゅん。

森いっぱい、星がまたたき出したら、
ほしぞらキャンプの、さあ、はじまり。
かくれんぼの木のもと、
森のなかま、あつまり、歌いおどる。

「ふかふかですよ!どうぞー!」
ねむるのは、このはの、ベット。
思い出に、ふんわり、つつまれる夜。

あしたの朝は、みんな、早おき。
待ちに、待った、森のてんぼう台、
かんせい、おひろめの日。

森の、いちばん、高いところ。
空に、どこより、近いばしょ。
何が、見える? 何か、聞こえる?

コロルは、目を閉じ、思いめぐらす。
いつのまにか、夜はふかまり、
生まれた日のことを、夢に見ていた

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「おやすみのところ、ごめんなさい。
ちょっと、いいかしら…」

どこからか、高くすんだ声。
ためらいがちに、コロルを起こす。

「こっち、こっちです…」
え、どこどこ?

起きあがり、声のほうへ。
夜の森を、てくてく、歩く。
月あかりの森は、べっせかい。

声をたどり、ついたのは、
木々のあいだ、そびえ立つ、てんぼう台。

カギが、カチャン…
とびらが、キィー…
しぜんに、ひらく。

くるくる、下から上へ、らせんかいだん。
とんとん、のぼれば、森のはるか上。

ぐるっと、パノラマ360ど。
なみなみ、夜の森の海。
ひろがる、森のむこうがわ。

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すると空から、さっきの声、

「来てくださり、ありがとう。私、朝の空です。

じつは、空どうしで、話しあい、
このてんぼう台では、夕やけや、朝やけ、
ゆっくり、見てもらいたいね、ってことになって。

さっそく、きょう、みなさんを、
いちばん、私らしい色で、おむかえしたいのですが…
おもちの石から、色ひとつ、かしてもらえませんか。」

石を、いっしょに、のぞいてみる。
朝の空にも、いろんな色。
さがすは、夜から朝へかわるとき、
いっしゅん、あらわれる、朝のほほ笑みの色。
でも、石には、ないみたい。

ころっ
ころっ

そうだ、ないなら、つくればいい!

石のなか、色と色を、まぜ合わせ、
「あさそら色」づくり、大さくせん。

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まずは、月夜の青と、朝日かがやく赤。
石を、ゆっくり、ぐるぐる、まわす。
まざりあい、できたのは、濃いむらさき。

きれい!
でも何かが、たりない、なんだろう?

コロルが、森のぼうけんで、見つけて来たのは、
色にたくされた、だれかのおもい、メッセージ。
「みんなに、つたえたいこと、ありますか?」

あさそらは、
「いつもここで、ちゃんと見ていますよって、ことかしら。
もちろん、ずっと、あなたのことも。
森に咲いた笑顔も、こぼれた涙も。何でもない1日も。」

さっそく、くわえる、
笑顔の淡いピンクと、涙のうすい水色。
笑顔は、ちょっと、多めが、いいね。
それから、何色にもなれる、白を。

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ぐるぐる
ぐるぐる

だんだん、マーブルもよう、グラデーション。
「あさそらさん、ピンときた色、教えてください!」

ぐるぐる…
ぐるぐる…

「あっ!この色、おねがいします!」

石に広がる、マーブルもよう、まんなかの色。
あさそららしい、かれんな、淡いむらさき。

この色…どこかで、見たことがあるような?

それは、みんなが知ってる、世界のはじまりの色。
暗やみから、光にむかって、泣きながら生まれるとき、
だれもが、小さなひとみに、はじめて、とらえる色。

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さあ、これを、どうすればいいのかな?

てんぼう台のうえ、ちゃいろの木ばこに、
きちんと、たたまれた、空のカーテン。

いちばん星が光ったら、
夜明けのことりが、空に広げる。
コロルは、ほしぞらのなか、その時を待つ。

もうすぐ夜が、おわる。
あたらしい1日が、はじまる。

手の中に、ふしぎの石。
いろんな色を、見つけてきたね。

あとどれくらいの色に、出会えるかな。
森のむこうにある色も、見てみたい。
きみと、ずっといっしょに、さがせるかな。

石を、ぎゅうっと、だきしめた。
だいじなものを、だきしめると、
心も、ぎゅうっとなるの、なんでかな。

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ピカッ
シュッ

夜空に、朝の目ざめの、流れ星。

その時、

キラキラどうぞ
キラキラひとつ

石が光り出し、空のカーテンが、
見るまに、あさそら色に染まった。

コロルは、夜明けを知らせる、ふえをふいた。

ピロロロローーーーッ

集まってきた、夜明けのことり。
あさそらカーテンが、空いっぱい、広がった。

森のさかい目に立つ、てんぼう台。
森と、森のむこうを、つなぐ、ばしょ。
ふたつの世界を、つつむ空は、あさそら色。

それは、だれも見たことがない、あたらしい色の空。
でも、だれもが知っている、なつかしい空の色。

ことばなく、見あげる、森のなかまたち。
森に、ゆっくり流れる、夜明けのとき。

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おひさまのぼれば、すっかり、いつもの朝。

「ねえ、さっきのふえ、あなた?
きのうも、吹いてたよね!
へんじに、吹いてみたんだけど、気づいた?」

ふりむくと、にこやかに立つ、
コロルと、おなじ年くらいの、
コロルより、のっぽの子。

首には、ことりのふえ。
手には、ふしぎの石!

その子の石は、コロルのより、ちょっと大きく、
その子のみたいに、ほそながのっぽ。

おたがいに、じぶんの石を見せあって、
その色、すてきだね、どこで見つけたの?
ほほえみあえば、石どうしも、かがやきあう。

さあ、
ふたりと、ふたつ、森のむこうへ。

dummy dummy

ころっ
ころろっ

ある日、ポケットのなか、やってきて、
ぼうけんへと、せなかをおす、ふしぎの石。

それは、
もりの、ひみつの、おくりもの。

今はまだ小さな手のひらと、
出会った色を、守ってくれる。

じぶんだけの色を、
いつか手にする、その日まで。

あたらしい日々を、ともに、ゆく。

キラキラどうぞ
キラキラひとつ

dummy dummy

おしまい

ランドセル

あさそら

Twilight Purple

朝日がのぼりはじめた空をイメージした、淡い紫色です。明け方の澄んだ空気を含んだような、透明度の高いパープルは、心くすぐる可憐な色合いです。