このは
森の葉、ゆらゆら、風にゆれる。
ずんずん、向かう、アスレチック。
はぐれてしまった、ふしぎの石、
もうすぐ、むかえに行くからね。
見上げれば、森の緑。
きみどり、みどり、ふかみどり、
みどり、いろいろ、きれいだな。
さわさわ
さわさわ
風が、ふいた。
ヒラヒラー
ヒラッヒラ~
森に舞う、葉っぱが2まい。
「お手紙ですよー」
「お手紙だよ~っ」
この森の木の葉は、ことばの葉。
お気にいりの葉に、メッセージを書いたら、
風にのり、ヒラヒラとどく、このはの手紙。
コロルの手のなか、
まいおりてきた、2つうの手紙。
1つう目。さくらの、やわらかこのは。
2つう目。ひいらぎの、ギザギザこのは。
先に手にした、さくらのこのは、
森のひかりに、すかして読む。
ーコロルへ
森のみんなからの、じょうほうです。
石は、きいちごたちと、あそんでいるみたい。
森の入りぐちの さくらよりー
さくらの子が、じぶんの葉に書いた、
はじめての手紙。
うれしいな、大事にしまい、走りだす。
向かうは、アスレチック!じゃなくて、
きいちごレストラン!
……いや待て。
ふたつめ、ちゃんと読んでから。
つぎは、ふかいみどりの、ギザギザこのは。
ーがけの上のくまへ
おばあちゃんが、はちみつを、食べたいそうです。
きのうの、マジック、さいこうでした。
がけの下のくま よりー
え?あて先、まちがえてない?
「まーた!やっちゃった!どうしよう!」
おろおろする、ギザギザこのは。
2つうの手紙をまえに、考えるコロル。
すぐ、石のところへ、いきたい。
でも、はちみつ待ってる、おばあちゃん……
「がけはすぐそこ、いこう!」
先に、てがみを、とどけることに。
とどけ先をまちがえて、
しょんぼりしてる、ギザギザこのはと、
いそいで向かう、がけの上。
がけが見えてきた、その時、
ポツポツポツ
ザー
ザーザー
ザァーーーーーーーーーー
まえも見えない、すごい雨。
あわてていると、
ギザギザこのはが、傘になり、
コロルを雨から、守ってくれた。
石は、だいじょうぶかな。
どうか、ぶじでいて。
雨が、森のにおいを、ゆりおこす。
くんくんくん…はなから、むねに、
ぶわっと広がる、緑のにおい。
いのちみなぎる、雨の森。
雨のかずだけ、濃くなってゆく、
ギザギザこのは、ふかみどり。
そのうち、ぱっと、雨ぐも晴れて、
森いっぱい、おおきな虹。
きいちごが、ポケットで歌い出す。
『お手紙 まちがえ おおあわて
でも見てごらん
赤だいだい 黄色に緑 青あい紫
7つの色は ドレミファソラシ
空にかかる 7つのメロディ
虹のみちは いつも とおまわり
よりみちしただけ であうよ せかい』
コロルも、ギザギザこのはも、
虹のよりみちソングで、
かんぜんに、元気かいふく。
コロルは、
「石といっしょに、虹を見たかったな」
心のなかに虹を、ぎゅっとやきつけた。
どこかで、
ころっ、ころろっと、
石が、うごいた気がした。
とうとう、ついた、がけの上。
コンコン!
とびらを、たたく。
くまが出てきた。
「がけの上のくまさん、
がけの下のくまさんからの、お手紙ですっ!」
ギザギザこのは、ちゃんと、かくにん。
くまの大きな手のなかへ。
「ありがとう。おつかれさま。」
くまは、コロルをお茶にさそってくれた。
でも、いそぐので…もじもじしていると、
「じゃあ、これ、よかったらどうぞ。
ことしは、これで、ぜんぶだそうよ。」
小さなカゴ、いっぱいの、きいちご。
これで、ぜんぶということは、
もしかして、このなかに!?
じっと、目をこらす。
ひとつだけ、虹いろ、
赤いきいちごでは、ないものが……
見つけた!
キラキラ どうぞ
キラキラ ひとつ
石は、コロルの心の景色を、
ちゃんと、うけとっていた。
コロルは、このはの手紙をかくことに。
きりかぶや、さくらの子、森のみんなに、
石が見つかったお礼、きょうのできごと、
思い出し、葉っぱにたくす、心をこめて。
えらんだのは、ギザギザこのは。
おっちょこちょいなぶん、
いろんなけしきを、しっている。
雨ふれば、やさしく、しずく受けとめて。
ギザギザの木を見つけ、
このは、いちまい、くださいな。
ギザギザこのはが、
ヒラッヒラ~風とあそぶ。
クッルクル~光におどる。
「お手紙だよ~っ」
ことば刻んだ、ふかい緑が、
時のかすみに、つつまれる。
記憶が、わすれたくない思い出に、
かわっていく。
つづく
このは
Forest Green
霞がかったスモーキーな深緑。グリーンとグレーを優しくブレンドしたような、上品な風合いです。年齢や性別を問わず馴染みやすいカラー。